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8月15日(土) 曇りときどき雨 昆明⇒景洪 299次長途バス
朝、目が覚めたら小雨が降っていた。でも今日は朝食にお粥を食べに行こうと意気込んでいたから、宿の近くの、昨日行った市場へ行く。食堂は何軒かあって、どこにしようかとウロついているうちに、芝麻球を発見。中国ならではの握り拳くらいの大きさのヤツ。すかさず買ってしまう。それをほおばりながらもう少し歩き、お粥に入れるためのザーサイの小袋を買ってから、一軒の食堂に入った。ちょっと低すぎる椅子に座って、お粥をすする。ザーサイは付いていた。買わなくてもよかったな。 食後、宿に戻って休憩。荷造りをして、お昼前、宿を出た。 バックパックを長途バスターミナルに預けてから、朝とは違う市場を見て回る。最初に行った市場には、果物とお茶、それにお土産屋さんがあった。ちょっと不思議な取り合わせだ。そして二つ目に入った市場は、すごい混雑だった。通路は狭いのに市場全体の面積はかなり広いみたいで、入り口からは想像できないくらい奥が深い。まるで迷宮みたい。それに、何でもある。食べ物、服、靴、文房具、工具、日用雑貨……。特に毛糸売り場はすごい。エリアが広くって、量も種類もとても多い。一面、色とりどりのお花畑って感じ。なかなか気に入ったのもあって欲しくなったけど、どのくらい必要になるのかぜんぜん見当がつかなかったから買えなかった。 そろそろ時間なので、荷物を受け取って候車室へ向かう。でも、発車30分前になっても何の案内もなくて、不安になって自分たちでバスを探しに行くことにした。 停車場をさまよって、あたしたちの目的地の札を付けたバスを発見。でも、運転手に切符を見せると、「違う」と冷たく言われる。「じゃあ、どこにあるん?」と尋ねても、「知らん」と、やっぱり冷たく突き放されてしまった。 仕方なく、再びバスの間をさまよう。暫くすると、「どこに行くん?」と声をかけてくれる人が現れだして、そのたびに切符を見せつつ、辿り着いた場所はえらく外れたトコだった。 案内されて乗り込んでみると、この寝台バスのベッドは枕一体型のビニール御座が敷かれた二段ベッドで、一つのベッドに二人ずつ寝るようになっている。一段に一人・計二人、なんじゃなくて、一段に二人・計四人。はっきり言って狭い。以前に中国で乗った寝台バスは二回とも一人ずつだったし、前回のやつなんか、結構キレイでリクライニングシートを倒すとベッドになるってヤツだった。あのときあれは「豪華臥鋪車」って書いてあったけど、確かにそうだったんだなーって、今回のバスを見て思った。 でも、まあまあの居心地だ。上段だから眺めもいいし。ただ心配なのは、バックパック。下段のベッドの下に押し込まれてしまった。まあ、屋根の上に積むよりはいいんだけど、景洪に着く頃には、さぞかし砂まみれになってるんだろうな……。 なーんて心配をしている場合ではなくなった。乗ってから一時間くらいしか経ってないのに、トイレに行きたくなってしまったのだ。乗る前に、ちゃんとトイレに行っておいたのに。ちょっと肌寒かったからかな。おまけに、揺れ具合が悪い。そのうち休憩になることや、他のお客さんがトイレに行きたいと言い出すことを期待しながら、我慢する。でも、そんな幸運は一向に訪れる様子はない。 かなりヤバい。車窓から深い茂みや木立が見えるたび、「あそこなら青空トイレができるかも……」ってことばっかり考えてしまう。いずれにせよ、本当に我慢できなくなってしまってからでは遅い。それは分かってるけど、なかなか言い出せないまま時間が過ぎる。 ええい、言ってしまおう。こんなときに恥だの何だのって言ってられない。というわけで、意を決して、あたしのすぐ前のベッドの乗務員らしきお兄さんに、「トイレに行きたい」と言った。寝ているのを起こしてまで。すると、「ムリだよ」と言いつつ、運転手に伝えてくれた。そして、もう少し待って、と言われた。言ってしまうとホッとした。 それをきっかけに、お兄さんはいろいろと話しかけてきた。気は少し紛れるけど、期待とは裏腹になかなかバスは止まらない。もう、ホントにヤバイかも。もう一度、お兄さんに、「今すぐ行きたいよ〜」と泣きつく。お兄さんはそれわまた運転手に伝えてくれて、あともう少し待って、と言った。 こんなときの時間は長い。死ぬような(?)思いをしているうちに、やっと公衆トイレのある場所にバスが停まった。急いで下に降り、急いで靴を履いて、トイレへダッシュ。田舎の公衆トイレだから、床に長方形の穴が開いていて低い仕切りだけの、天井なしドアなしトイレだけど、そんなの気にしない。とにかくトイレに行けた、それだけで感謝感激だ。用を足していると、他の乗客もぞろぞろ来た。順番を待ちきれなかったのか、少数民族の衣装を着たおばあさんが、穴のないただの床で用を足しだした。 すっきり落ちついて、バスに戻る。だけど、なぜかまたすぐに行きたくなってきた。普段でもほんのたまーに、ひどくトイレが近くなることがあるけど、何もこんなときにそうならなくってもいいのに……。涼しいのが原因だと思うから、腰から下だけにお布団を掛けておく。やがてまたすごく行きたくなってきた頃、今度は運良く、給油のためにガソリンスタンドに停車した。 他の乗客が行く方へついていき、トイレを済ます。トイレから出てくると、バスの前にサンザシ飴売りのおじいさんがいた。欲しいなーと思って飴を見つめながらも、買わずにバスに乗ってベッドに戻る。すると、少しして戻ってきた乗務員のお兄さんが、サンザシ飴とリンゴ飴を一本ずつ持ってきた。お兄さんが食べるんだと思ってたら、なんとあたしたちにくれた! う……うれしすぎるっ。トイレ騒動でさんざん迷惑かけたのに、更にこんなことまでしてもらって。食べていると、「おいしい?」って訊いてきたけど、そりゃ、もう、おいしいよ、すっごく。 またバスは走り、やがて夕食時間になった。すると、乗務員のお兄さんは、もう一人の乗務員らしきお兄さんと二人で、あたしたちを食堂に案内してくれた。で、なんと食事をおごってくれたのだ。ああ、なんていい人たちなんだろう。お兄さんは、今回の旅ではほとんど見かけなくなっていた窓からの「タン飛ばし」をしていたから、最初の印象は悪かったんだけど。見知らぬ、それも迷惑かけた外国人に、こんなに親切にしてくれるなんて。 食後はちゃんとトイレに行って、バスに戻った。それから後、夜遅くに最後のトイレ休憩があった。 トイレの話ばかりになっちゃったけど、景色もちゃんと見てたんだぞ。山の中の棚田がすごくキレイだった。少し日本の農村風景と似てるけど、どこもすごい赤土ばっかり。緑と赤のコントラストは印象的だ。
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