8月22日(土) 晴れ  昆明⇒長沙  62次・硬臥

 列車、それも夜の9時40分発のに乗るだけの日だから、朝10時半までのんびりと寝ているつもりだった。なのに9時半頃、服務員さんが部屋の掃除にやってきて、起こされてしまった。掃除が終わった後もう一度寝て、10時半、荷造り開始。チェックアウト時間ぎりぎりの11時50分、宿を出る。
 昨日の切符の支払いで一文無し状態なのに、今日は土曜日。中国銀行はお休み。あたしらの泊まってた宿には、両替のサービスはない。そこで、ダメかもしれない(高級ホテルは宿泊客にしか両替してくれないことが多い)と思いつつも、いちばん近い金竜飯店に頼みに行ってみた。が、重そうなバックパックを背負ったまま(今この町に着いたばっかりでお金がないけど銀行は休みだし、このままじゃどこにも泊まれないよ〜、というフリ)のあたしらを見ても心を動かしてはくれないらしく、ゲスト・オンリーだと言ってしてくれない。「でも、今日は土曜日だから、銀行は開いてないんだよ」と言うと、昆明飯店ならしてくれる、と教えてくれた。場所は知ってるけれどここからじゃ遠いから、一旦駅に行って荷物を預けてから、バスで向かった。
 以前に同じような状態に陥ったときにホテルをたらい回しにされた思い出があるから、不安だった。覚悟しつつ、何年か前に見たときとはまるで変わってしまった超立派なホテルの中に入る。でも、フロントに近づくと、服務員のおねえさんは、とっても優しい笑顔で迎えてくれた。そして、こんな宿泊客でもない、いかにも貧乏旅行者そうなあたしらにイヤな顔一つせずに、両替コーナーの場所を教えてくれた。でも、ペラペラの英語を完璧には聞き取れてなくて、途中でちょっとキョロキョロ。そしたら、また別のホテルマンがとても親切に教えてくれた。すごく嬉しかった。それとは対照的に、両替のおじさんは無愛想だったけど、とにかく両替ができてホッとした。
 戻りの道端で、公安が待機して写真の展示をしてあったのを覗いてみる。麻薬撲滅キャンペーンみたい。麻薬で捕まった犯人の手枷をはめられている写真や、麻薬のせいでヘンになって起きた事件や事故の生々しい写真がいつぱい。カラーのグチャグチャ血みどろ死体の写真もあるし、やっぱり顔を隠していないものが多い。こんなのが、ただの道端に模造紙を吊って、そこに貼ってあるのだ。やっぱり中国ってすごい。でも上海駅にあった事故写真を見たときも思ったけど、ひょっとしたら、このくらいハッキリ見せないと、みんな事の重大性がわかんないのかもしれない……。
 残りの時間は、泊まっていた宿のロビーとか百貨店の前の階段とかにときどき座って休憩しながら、市場で買い物をする。
 宿のロビーに座っているときは、やたらとミャンマー人に話しかけられた。でも、「ジャパニーズ?」と聞いてきた後、なぜかイキナリ「サヨナラ」と言われる。彼らの知っている唯一の日本語なのかな? でも、なんかヘン。
 市場では理恵ちゃんが風船を買ったんだけど、その店のオヤジが最初ものすごくふっかけてきてムカついた。こんな店、外国人慣れしてるわけでもないだろうに。
 百貨店では、入り口でヴィダルサスーンのシャンプー・リンスの試供品をもらった。びっくり。ヴィダルサスーンということにも驚いたけど、そもそも試供品を配っている、ということ自体にも驚いた。この百貨店のスーパーマーケット部門で、おやつのアイスと列車内の食料を買った。
 夕食は、昆明最後だから米線を食べようということになって、今回は炒米線。店のお姉さんに、辛くないか何度も確認したのに、とっても辛い。それさえなければ、すごくおいしかったのに……。
 やっと何とか時間を潰せて、少し早いけど夜7時、駅へ行った。預けていた荷物を受け取って入り口に行くと、発車状況の黒板があったので、見てみる。すると……「62次北京東行き、発車遅れます。発車時間は夜中の0時」と書いてある。ええーっ!? あと5時間……。ホントに、ここのところ、乗り物がマトモにいかないのが、ちょっと多すぎじゃない?
 なーんてボヤいてもどうなるものでもなく、候車室の椅子に座る。この部屋は62次専用だ。でも、すぐに満員になってしまった。やがて、座れない人もでてくる。早めに来て正解だったな。
 あたしは、ヒマ潰しに、この日記を書いている。こんなことには慣れっこの中国人は、寝てる人、荷物を机代わりにして例によってトランプで大富豪をしている人、いろいろだ。これが日本だったら、文句と非難の嵐だろうな。


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